生物多様性条約のこれまでの経過

COP3

平成8年11月22日

生物多様性条約第3回締約国会議の結果について

 生物多様性条約第3回締約国会議は、141の締約国及びその他の国・機関等の参加のもと、去る11月4〜15日に、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された。その結果、農業の生物多様性、森林の生物多様性、原住民などに関する26の決議が採択された。
開催日

1996年(平成8年)11月4日(月)〜15日(金)

2 開催場所

アルゼンチン・ブエノスアイレス市

3 出席者

141締約国、及びその他の国・機関等。
我が国からは荒船アルゼンチン大使を首席代表とし、菊地環境庁長官官房審議官(代表代理)ほか、環境庁、外務省、大蔵省、農林水産省、林野庁、水産庁、通産省、大蔵省から合計13名が出席。

4 会議の概要

(1)日程


4日(月)

 

 開会式

(アウソガレイ・アルゼンチン環境自然資源大臣を全体会合議長に選出) 

 

 

 全体会合

(予算案等の説明)

5日(火)

〜13日(水)

 全体委員会

(議長:ルイ・キュラ氏(スイス))

13日(水)

〜14日(木)

 閣僚級会合

(我が国からは荒船アルゼンチン大使が演説)

15日(金)

 

 全体会合

(26の決議を採択)


(2)作業グループ(6日〜14日)

全体委員会の下に以下の4つの作業グループが公式な会合として設置され、そこにおける議論の結果に基づき全体委員会への提案がなされた。
1 農業、2 資金メカニズム、3 予算・中期作業計画、4 国連特別総会に対するインプットまた、このほかにもいくつかの非公式なコンタクト・グループ等の会合が開催された。

(3)閣僚級会合(13日〜14日)

150を越える国、国際機関、NGO等からの演説が行われた。我が国は、国家戦略に基づく我が方のビジョン等を中心に演説し、別途会場で生物多様性国家戦略と環境ODA資料の英訳版を配布した。

(4)決議(15日)

15日の全体会合において、26の決議が採択された。

5 主な議題についての結果概要

(1)中期作業計画

第2回締約国会議で決定された96〜97年の中期作業計画については、各締約国等が、1 締約国会議の活動、2 中期作業計画に対する全般的なレビュー、3 長期作業計画、についての意見を97年3月末までに事務局に提出し、レビューを行っていくこととなった。

(2)資金メカニズム

先進国と途上国でいくつかの論点の対立があったが、現在の条約の資金供与制度の有効性について最初の見直しを行うため、その目的及び基準を含むガイドラインを第4回締約国会議で定めることとなった。また、資金供与制度に対するガイダンスとして資金供与の重点分野等を定めること、事務局において追加的な資金供与について検討を行いその情報を第4回締約国会議に報告すること等が決まった。

(3)農業の生物多様性

先進国と途上国の間で多くの論点の対立があったが、複数年次にわたる持続可能な農業に関する計画の策定、遺伝資源が食料・農業にもたらす顕在的・潜在的な利用価値の維持増進及びその平等な分配、生物多様性に役立つ農業技術の開発・移転、農業の生物多様性への(正負両面での)影響評価手法・指標作成の促進、国家戦略の策定促進、農業作物の多様性の確保、生物多様性維持に役立つ農業への予算の優先的分配、等を含む24項目に及ぶ決議が採択された。

(4)森林の生物多様性

森林の生物多様性に関する作業計画については、森林に関する政府間パネル(IPF)と協調していくこと、また、IPFが終了した場合も検討が継続された場合にはそのプロセスと協調していくという方針が確認され、これを踏まえて森林の生物多様性に関する作業計画を作成すること等が決議された。

(5)原住民(Indigenous People)

多数の締約国及びNGOから、条約第8条(j)に規定される「原住民の知識、工夫及び慣行」について、第4回締約国会議までの間に特別の会合を開催して検討を促進すべきとの意見が出され、これを受けて5日間のワークショップを開催することが決議された。

(6)知的所有権

原住民の伝統的な知識等の取扱いが大きな議論となったが、最終的には、原住民の知識の保護のための知的所有権に関するケーススタディーを実施することとなった。また、WTOの貿易と環境に関する委員会(CTE)、世界知的所有権機関(WIPO)等、知的所有権を扱っている他の国際機関との連携を強化することとなった。

(7)遺伝資源へのアクセス

第2回締約国会議で決議された事項を更に発展させ、遺伝資源の取得の機会の確保に関する規定(条約第15条)の実施に係る各国・機関の制度・経験の情報の収集・分析・提供を一層進めるとともに、関係機関との連携を深めることとなった。

(8)クリアリング・ハウス・メカニズム(CHM)

CHMは、条約履行を推進するための情報交換の仕組みとして条約に規定されているものであり、インターネットを通じた試験的情報提供等を既に開始している。これを更に発展させるとともに、メカニズムの構築推進のため、地域毎のワークショップの開催や事務局によるニュースレターの発行等を行うこととなった。また、途上国におけるCHMに関連する能力向上のための支援強化についても勧告された。

(9)バイオセイフティ

バイオセイフティ議定書にかかる検討については、7月に第1回会合が開催された作業部会に委ねられているため、当該作業部会のビューロー(運営委員会)の任期等と会合の開催回数についての議論に焦点が絞られた。この結果、第2回会合までに各地域ごとにビューローメンバー2名を事務局に届け出る一方、第4回締約国会議までは現在のビューローの議長が継続して任務を遂行することが決定された。

(10)条約第6条(保全と持続的利用のための一般的施策)及び第8条(生息域内保全)の履行
事務局から提案された「テーマを絞ったアプローチ」(thematic approach)が了承され、外来種・保護区など4つのテーマについて優先的に情報交換を進めていくこととなった。なお、第4回締約国会議の期日決定に伴い、第6条の履行にかかる最初の国別報告書の提出期限が、97年6月30日から98年1月1日に延期された。

(11)科学技術助言補助機関(SBSTTA)の新議長の選出

15日の全体会合で「その他の事項」として科学技術助言補助機関(SBSTTA)の新議長の選挙が行われ、アジア地域から推薦されたマレーシアのザクリ博士が選出された。

6 次回会合等

次回締約国会議については、スロバキアの招待に基づき98年5月4日〜15日に同国の首都ブラティスティラバで開催されることに決定した。
また、科学技術助言補助機関(SBSTTA)第3回会合については97年9月にモントリオールで開催されることに決定した。

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