設立趣旨
20世紀末より明らかになってきた地球規模の様々な危機群(地下資源の枯渇、汚染の蓄積、生態系の劣化)が、世紀を越えた今、予測の領域から現実の領域へとなりつつある。と同時に我が国固有の危機群(食糧・エネルギー自給率の低さ、危機に対する活動の脆弱さ)は、解決のすべもなく、放置された状態といっても過言ではない。このまま無為無策の状態が続けば、10数年後には巨大な危機の中に我々は身を置くことになるだろう。
目前に迫った2010年代には、巨大な3つの危機が我々を襲う。化石燃料の需給バランスの崩れによるエネルギー危機、異常気象や水不足による食糧危機、経済構造の劣化や財政赤字の累積による経済危機(化石燃料や食糧の輸入量も激減する)、という3つの危機は、かなりの確度で予想されている。
従って、これからの10年間に何を為すかにより、クラッシュするか、ソフトランディングするかが決定する。一説には、最早ソフトランディングする時間的余裕はなく、時間切れとも言われるまでに危機は深刻化しているのだ。
とは言え、我々の行動は性急であってはならない。危機を回避するためには、常に冷静な判断を必要とする。我々は先ず、危機群の精密な分析、そして、危機群の原因に関する徹底した究明をしなくてはならない。これなくしては、大きなボタンの掛け違いを起こし、打開の方途を見失う。
我々が目指す社会は、一言で言えば、持続可能社会である。そして、この持続可能社会を構築する上で、最も重要な社会セクターがNPOであるとの結論に逢着した。確かに、ある面ではNPOの目指す社会はいわゆる市民社会ではあるが、市民社会を構築する前にクラッシュしてしまっては何もならない。我々が為すべき第一義は危機からの回避である。緻密な戦略によって、ありとあらゆる社会セクターとの協働によって、ありとあらゆる社会問題を、持続可能社会の構築という唯一の目標に向かい、可能な限りの力を投入して解決していかなければならない。
このような劣悪な状況の中で、あるいは、劣悪なる状況があったからこそ、思いを一にする人々が集結できたことは、不幸中の幸いというべきだろう。この10年、あるいは20年以上にわたり、個人的に危機群を認識し、危機群から回避すべく行動してきた様々な分野の人々が、この1年で一気にネットワークを作り得たことは、歴史が我々に行動を起こすべく促している証であろう。
今回結集した人々が、今後さらなる結集の輪を広げ、それぞれが冷静に、地に足のついた行動をとれば、そしてその行動が社会的に認知されれば、必ずや危機は回避されるであろうことを信ずる。
危機から回避し持続可能社会を構築することは、現在という社会に生き、しかも社会的責任を担っている我々同時代人に課せられた時代的責務を全うすることである。その意味で、われわれの個人的行動原理は、到来する危機の最大の被害者になる可能性が強い、我々の子供たちのために、そして、その子供たちのために、今日まで累積させた負の遺産を解消したいという親としての責任に他ならないのである。