0.前提となる社会状況
地方自治推進を考える上で、先ずは、社会状況を把握する必要があります。また、社会状況は、グローバルな状況と国内の状況に分けて考える必要があります。グローバルな状況は、ひとことで言えば『持続不能な状況』と言えます。これに関しては、1970年代より言い尽くされていますが、原因の根本的追求や、哲学的な視点も必要です。
国内の状況で一番の問題は、既に財政が破綻していることでしょう。国家と地方の財政破綻は、公共サービスの崩壊のみならず、地方経済に大きな影響を与えます。また少子高齢化も、じわじわと、しかも確実に予想される大きな危機です。地域ごとの人口シミュレーションは、今後の地域の公共サービスを考える上で、極めて重要な基礎的情報となります。
T.基本理念
我々の提言する地方自治推進は、持続可能な地域を構築する上での重要課題です。従って、持続可能な地域を構築する上での地方自治のあり方を提言します。
持続可能な地域構築という大きな目標を達成するためには、基本的な理念が必要になります。先ず必要になるのは、経済優先の価値観からの脱却でしょう。そのような視点でとらえた発想が、次の3点です。
1.『経済優先から持続性優先』という視点でとらえたとき、地域資源をどう捉えた
らよいか
2.『経済優先から持続性優先』という視点でとらえたとき、地域の発展とは何か
3.孤立ではなく、ネットワークを利用した新しいコミュニティーのありかたについ
て
U.『持続可能性』を基盤とした市町村合併のあり方と地方自治
現在進行中の市町村合併は、持続可能なコミュニティーを構築する上で、大きなチャンスです。ただし、従来考えられているような、ミニ中央集権型の合併ではなく、行政機能は分散すべきです。
こうした理念で考えられた方式が、『マルチスタンダード』方式による市町村合併です。現在の多くの市町村は、昭和の大合併時に作られたもので、50年程の歴史があります。この50年の間に、地域で培われた文化を、一層平板なものにするのは得策ではありません。
『マルチスタンダード』方式による市町村合併は、以下のことを重視して考えられたシステムです。
1.地域の文化や独自性を最大限温存すること
2.できる限り身近に行政機能があること
3.行政コストを最小限にして、多くの公共サービスはNPOが担うこと
4.『補完性の原則』に則って、地域コミュニティーの集積として、社会を築き上げて行
くこと
V.持続可能なコミュニティーの集積としての広域自治体、そして国家
持続可能なコミュニティーの集積としての社会構築という延長線上には、どのような形態があるでしょう。その時、県や国という、より大きな枠組みはどのような機能を持つべきでしょうか。こうした、より大きな枠組みを、持続可能な形態としての『循環型社会』として捉えると、『流域』になります。今後、市町村合併が進むと、まずいらなくなるのが『県』という枠組みです。これからは、複数の河川の『流域連合』としての『州』が、独立性を持った組織となることでしょう。
また、広域での地域間のつながりを考える上で、『都市と地方の相互補完性』の確立が必要になります。都市は、都市単体では、『循環型社会』や、持続可能社会を構築できません。
物質循環可能な社会は、その社会の内部に自然資源を持たねばなりません。
一方、地方では、高等教育や、高度な技術の集積による産業を自前で持つことは困難です。
従って、都市と地方は、相互補完的に機能分担しなくてはなりません。都市は持続不能性を集積した領域であり、長期的には縮小する必要があります。しかし、当面の間は、都市と地方の2つのスタンダードで社会を構成する必要があるでしょう。
W.地方分権・市民分権のための新たな税のあり方
さて、地方自治推進を考える上で、避けて通れないのが税制の問題です。現在国でも、地方への税源移譲を含めた税制の改正が検討されてはいます。しかし、地方自治を推進するための税制改正ではなく、国の負担を減らすことが目的のようです。
我々が主張する新たな税制は、NPOへの『目的税』的なお金の流れを含んだものです。また、最大の徴税権を基礎自治体が持つことで、真の地方自治を実現しようと考えています。これらの改革は、霞ヶ関には不可能で、地方が結集して、大きな声にしていく必要があります。行過ぎた中央集権体制と決別し、地方が主体性を発揮できる社会にするための税制改正です。
X.間接民主主義とNPO(NPOを含む、新たな公共サービスを模索する)
欧米では、NPOの機能の一つとして、『民主主義の負の遺産を解消すること』が挙げられています。現在採用されている民主主義、特に、『間接民主主義』とNPOの関係はどうなるのでしょうか。この問題は地域の公共サービスの主体を考える上で重要なポイントです。さらに、法の執行者である行政とNPOが、如何にして相互補完的に住み分けられるかも問題です。行政コストを削減する上でも、地域の生の問題を解決する上でも、NPOへの期待は拡大しています。
これらの問題を整理する鍵は、『補完性の原則』にあると我々は考えています。住民やコミュニティーでは非効率になったり不可能なことを、はじめて行政が行うという考え方です。住民・コミュニティーで解決可能な課題には行政が手出しない、行政は補完に徹する社会システムです。
Y.地方自治を可能にするマンパワーとは
地方が自立するためには、マンパワーが必要です。持続可能な地域の発展を可能にするのは、地域のマンパワーに他なりません。では、どのようなマンパワーが必要なのでしょうか。
21世紀は大きく変化する時代です。こうした時代に適応できるマンパワーを考えねばなりません。戦後(あるいは明治以来)の日本と現在の日本の根本的な違いは何でしょうか。
これまでの日本には、欧米という青写真がありました。そこに向かっていけばよかったのです。しかし今、『持続性』というミッションはあるものの、具体的な青写真がどこにもありませ
ん。今必要なマンパワーとは、具体的な青写真を提示し、合意を形成していく能力ではないでしょうか。
Z.持続不能という危機に対する行動計画
持続不能状態とは、広義の意味で、『危機』と考えられます。これは、地震等の突発的な危機ではなく、緩慢に訪れる危機です。持続不能問題への対処は、広い意味で、『危機管理』と考えることが出来ます。
さて、持続不能問題という危機に対してどのように対処すればよいのでしょうか。財政、環境等様々な持続不能な問題は、国家が対処する問題と考えられているようです。しかし、これまでの経過を見れば分かるように、国は対処する能力を十分に備えてはいません。危機は、地域から解決することが重要です。そして、解決に当たっては、冷静沈着に、具体的な目標を設定することが必要です。
[.サスティナブルコミュニティーを可能にするシミュレーション
さて、持続可能な社会システムが構想できても、それだけでは絵に書いた餅のようなものです。持続可能な社会は地域から構築していかねばなりません。では、そのようにすればよいのでしょうか。我々はそれを、『地域デザイン』と呼んでいます。
日本は亜寒帯から亜熱帯まで、様々な風土の地域があり、固有の文化をもっています。地域デザインの基本は、まずデータベースを作り、地域を見直すことから始まります。地域のデータベースとは、地域の自然資源と人的資源、そして、これまで蓄積したインフラなどです。それと同時に、地域の財政状況をしっかり把握する必要があります。特に今後の公共サービスを考える上で、財政状況の把握、そして人口推移予測は重要です。
\.地域経済試案
地域経済の現状と今後を概略的に示します。
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